古文書(盲目の竜序章)
*ファンブルグタイムスの転載です。
『…あの日、"神の鉄槌"が下された日…王宮から噴き出した炎は天まで昇る巨大な柱と化し、
国中に降り注いだ。どこへ逃げても炎は生き物のように追ってきて、多くの人を飲み込んだ。
炎に焼かれる私が最後に見たのは…天に向かって祈りを捧げる王女の姿だった。
王女は、涙ながらに何かを叫んでいた。あれはきっと、誰かの名前だったのだろうと思う。
誰かの名前を、ずっと…王女自身が炎に焼き尽くされるまで…ずっとずっと呼んでいたのだ…。
トルファジアの守護神と呼ばれた三頭の竜のうち、
ノーリとアディーンは王女の最後を見届けると、何処へかと飛び去っていった。
ドゥヴァの姿は最後まで王女と共にあった…』
「天槌の日」から3000年、トルファジアは、亡者蠢く死者の国となっている。
アルゼ神に救われることのない彼らは、
地上を彷徨いながら永遠に続く苦しみを…そして誰にも届くことのない祈りを繰り返す。
今日もノスフェラトスには竜の嘆きが響く。
また一つ、命と希望が消えたことを竜はひどく嘆くのだ。
女性の日記と思われる別の書は、こんな風に結ばれていた。
「たとえ世界の終わりがきても。
呪いを打ち破るとなんてできなくても。
二度と会うことができなくても。
…どこかであなたが生きのびてくれれば、それだけで……」